横内由可連載第7回 日本代表のアスリートだった両親 子供に素質がなかったらどうする?

    横内由可と申します。現役時代は体操、クレー射撃と2種目で日本代表として国際大会に出場していました。今回は私の長い競技経験から、未来のアスリートにスポーツを通して本当に得てもらいたい経験について書かせていただきます。

 

 20年に開催される東京五輪に向け有望な選手をマスコミが取り上げ、それを目にする機会が増えてきていますが、もしあなたのお子さんがそれらを見て「自分もこういうカッコいい選手になりたいから競技をやらせて欲しい」と相談されたらどのような返事をしますか?本人の希望を尊重してその世界へ飛び込ませるか、もしくはあなたにはそんな素質はないしアスリートでは将来食べていけないからなどの理由を伝えてあきらめさせるか。お子さんの将来を一番真剣に考えていらっしゃる親御さんにとって非常に判断に迷う場面であると思います。

 

 そこで考えていただきたいのが、お子さんにスポーツを通じてどのような経験を得てもらいたいかということです。正直なところ、様々な価値観が存在するのでこれが絶対という答えはありません。ただ、競技生活を20年送ってきた私が社会に出た現在、これが一番役立っているなと度々感じることがひとつあります。それは「挫折から試行錯誤して乗り越えた経験」です。

 

 人間が生きて行く上で困難のない人生などありえません。そんな困難に直面した時の底力になるのがその経験です。アスリートとして華々しく打ち立てた実績はその後の人生においてパワフルに影響することはほぼゼロに等しいと断言できます。

 

 我が家には来年、二人の子供が家族の仲間入りをする予定です。私も主人も日本代表のアスリート経験者ですが、その子供たちが何らかの競技で活躍できるとは限りません。素質がないということも十分にあり得るでしょう。私としてはスポーツを通して経験する様々なことがその子の人生を生きる上での強さの土台となれば、それで十分満足です。頑丈な土台を若いときにいかに築くか、それこそがスポーツをする一番の目的であると思います。

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横内由可(よこうち・ゆか) 1977年3月21日、東京都生まれの41歳。 9歳で器械体操を始める。13歳の時に朝日生命体操クラブへ。すぐに全日本選手権大会で個人総合7位入賞を果たし、高2年時にインターハイで個人総合2位に。同年にドルトムント世界選手権に出場し、段違い平行棒の降り技で新技D難度の「ARAI」が誕生。技に自分の名前を持つのは日本女子体操史上3人目の快挙だった。18歳で異種目のクレー射撃へ転向。日本代表で活躍し、02年の釜山アジア大会では団体で銅メダルを獲得。現在は異色の経験を活かし、トップアスリートの人生を応援する「トップアスリート・コンシェルジュ」、パーソナルトレーナーやスポーツコメンテーターなど幅広く活動している。