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横内由可連載第12回 子供は親の所有物ではない 伝説のアスリートと母親が築いた理想の「親子像」  

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  横内由可と申します。現役時代は体操、クレー射撃と2種目で日本代表として国際大会に出場していました。今回はアスリートを一番身近で支える家族について書かせていただきたいと思います。

 

 競技生活を引退してから約10年。今ではアスリートの気持ちとその親の立場の気持ちの両方が理解できる年齢になりました。そんな中、先日現役引退会見を開いたレスリングの吉田沙保里さんと会見場へ駆けつけたお母様(幸代さん)の姿が大変印象的でした。選手経験のある私の目にはあのお母様がいたからこそ彼女は安心して競技に向き合うことが出来たのだろうと強く感じました。その一番の理由はお母様がつくった2人の距離感にあります。吉田沙保里さんのお母様は会見の中で我が子に対し、ひとりの人間として本人が決断したことへの尊重と感謝を述べていらっしゃいました。これぞアスリートの母の姿であるといえるでしょう。

 

 世の中には「子供は親の所有物」であるかのように考え、接している親の姿を見かける機会が多々あります。私が大人になってからの体験ですが、同級生の実家に行くとそのお母様が投げかけていた言葉の中に「それはあなたには無理よ」「これをしてはいけません」などが当たり前のように使われていました。その時、もし私がこのような「母親」に育てられていたら自分の可能性は早々に摘まれアスリートとしての私はなかっただろうと感じました。

 

 来年はいよいよ東京でオリンピックが開催されます。観戦をきっかけに、選手に憧れを抱きアスリートの道へと進むお子さんも増えることと思います。親として選手を目指す子供にどのように接するか?このようにすれば完璧といった方法はありません。しかし、どの競技でも勝負の舞台に立てば誰も助けてはくれません。そんな孤独な状況を乗り切れるよう、自分で決断するちからを養う必要があります。

 

 私が器械体操の日本代表だった中学生の時、その日の練習がうまくいかなかったことが悔しくて涙をポロポロとこぼしながら食事していた姿を見て、母は無言で席を外しそっとしておいてくれました。体は物理的な距離をおいても心がしっかりと寄り添ってくれていたその温もりは今でも忘れません。

横内由可(よこうち・ゆか) 1977年3月21日、東京都生まれの41歳。 9歳で器械体操を始める。13歳の時に朝日生命体操クラブへ。すぐに全日本選手権大会で個人総合7位入賞を果たし、高2年時にインターハイで個人総合2位に。同年にドルトムント世界選手権に出場し、段違い平行棒の降り技で新技D難度の「ARAI」が誕生。技に自分の名前を持つのは日本女子体操史上3人目の快挙だった。18歳で異種目のクレー射撃へ転向。日本代表で活躍し、02年の釜山アジア大会では団体で銅メダルを獲得。現在は異色の経験を活かし、トップアスリートの人生を応援する「トップアスリート・コンシェルジュ」、パーソナルトレーナーやスポーツコメンテーターなど幅広く活動している。