中村紀洋連載第21回 「小・中学生にバントやエンドランをやらせるのは早すぎる」

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 プロ野球はクライマックス・シリーズで盛り上がっていましたね。短期決戦は独特の緊張感があります。この戦いを経験できた若手の選手たちは野球人生の大きな財産になると思います。僕は浜松開誠館で非常勤コーチを務めているのですが、アマチュアの試合を見る機会が多くなりました。

 

 僕自身も子供たちのプレーを見て「この子はこう教えた方がいいかな」など色々勉強させてもらっていますが、少し気になるのは小・中学生の試合でバントやエンドランを多用する場面が目立つことです。

 

 勝利至上主義で個々の役割として求められるかもしれませんが、この教え方は非常に危険だと思います。バントやエンドランは高度な技術を必要としますし、得点を取るための立派な作戦です。ただ小・中学生の時期からやらせるのは早すぎると思います。体が小さな子でも球を遠くへ飛ばした方が気持ちいいですし、野球が好きになります。長打を打てるコツは個々でつかむ時期が違います。

 

 以前の連載でもお話ししましたが、僕も中学時代までは全然打てませんでした。球を遠くへ飛ばすコツをつかんだのは高校入学後です。打てないからと言って小・中学生の時期から犠打やエンドランを多用すると打撃のスケールが小さくなり、子どもたちが持っている才能を摘む危険性があるのです。もちろん、全く使うなということではありません。全国大会や負けたら終わりの試合だったら犠打で走者を進めるケースが必要になってくるでしょう。ただ普段の試合は選手個々に自由に打たせた方が将来の伸びしろは大きいと思います。

 

 プロで犠打やエンドランがうまい選手たちも、高校時代は「4番・エース」だった選手たちがたくさんいます。高校まで犠打をしたことがなかったという小技のスペシャリストもいます。犠打やエンドランは高校以降でも身に付きますし、小さな頃から習得する必要はないように感じます。

 

 「N’s method」で子供たちを対象にした指導で大事にしていることはまず野球を好きになってもらえるようにすることです。体の小さな子供も強い打球やホームランを打ちたいですから、そのための指導をします。野球を好きになれば試合に勝ちたいと思いますし、指導者がうるさく言わなくても勝つためにどういう打撃をするか考えるようになります。先程も言及しましたが、試合で勝ちを優先してしまうと作戦面もそうですが試合に出場する選手が偏ってしまう傾向があります。ベンチ入りメンバーが全員、試合に出場できる環境が望ましいですね。

中村 紀洋(なかむら・のりひろ) 1973年7月24日、大阪府生まれの45歳。渋谷高で2年夏の90年に「4番・投手」で激戦区の大阪府予選を勝ち抜き、同校初の甲子園出場に導く。高校通算35本塁打。91年にドラフト4位で近鉄バファローズに入団し、「いてまえ打線」の4番として活躍した。00年に39本塁打、110打点で本塁打王、打点王を獲得。01年も132打点で2年連続打点王に輝き、チームを12年ぶりのリーグ優勝に導く。04年に日本代表でアテネ五輪に出場して銅メダルを獲得。メジャーリーグ挑戦を経て06年に日本球界復帰し、07年に中日で日本シリーズMVPを受賞した。13年にDeNAで通算2000安打を達成。15年に一般社団法人「N’s method」を設立し、独自のMethodで子ども達への野球指導、他種目アスリートを中心にトレーニング指導を行なっている。17年には静岡・浜松開誠館高校で硬式野球部の非常勤コーチに就任。高校生の指導に力を注ぐ。