松坂大輔の事故を軽視してはいけない。ファンとの接触に伴う大きなリスクとは

 

「J.T. STRENGTH & CONDITIONING」の代表取締役社長として活動しているJ.T.(高橋純一)と申します。今回はファンとの接触で右肩の違和感を覚えた中日の松坂大輔投手についてお話しさせて頂きます。

 

 松坂選手が今月11日に春季キャンプでファンに右ひじを引かれた後に右肩に違和感を覚えて戦列を離れた一件は大きな反響を呼びました。「ファンに引っ張られたぐらいでケガするのか」と疑念を抱く声もありますが、プロ野球の3球団でコンディショニング・トレーナーとして活動していた立場から意見を言わせて頂くと、ファンとの接触は故障につながるリスクが非常に大きいと感じます。

 

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 ファンは選手に触りたいという純粋な思いかもしれませんが、想像以上に強い力でユニフォームを引っ張っているケースも珍しくありません。ファンの方はそのつもりはなくても、前に進もうとする選手が後ろに引っ張られると体に負荷がかかります。もちろん、プロ野球選手は一般の方と筋肉の付き方や骨格が違います。強靭なイメージがあると思いますが、一方で体に関して非常にデリケートです。選手の中には子供を抱っこしていると、前腕二頭筋が張ってしまって投球に影響が出るため、登板数日前から抱っこを控えていた投手もいました。身体の中でも肩は繊細な部分です。脱臼などがあるように傍目から見ると強い接触でなくても損傷の危険性があります。

 

 ファンサービスは非常に大事だと思いますが、選手がケガをしては元も子もありません。トレーナーの見地から言わせて頂きますと、ファンの方が差し入れる食べ物や飲み物も選手の体に入れることでリスクが生じる危険性がゼロではありません。善意で頂けるのはありがたいのですが、選手によっては自分が選んだ食べ物や飲み物以外を体に入れたくない選手もいます。決してファンの方々が嫌いなわけではないので、ご理解いただけるとありがたいです。

 

 米国では今回のようにファンが選手を引っ張ったため、故障につながったトラブルを見聞きしたことがありません。ファンが選手に敬意を持っているからこそ、一定の距離感を持つなど関係性を見つめ直さなければいけないかもしれません。今回の松坂投手の件に心を痛めている野球ファンは多いと思います。何より松坂選手自身が責任を感じているかもしれません。右肩痛で苦しみましたが、中日に移籍した昨年は6勝を挙げてカムバック賞を獲得。その生き様はファンに感動を与えてくれました。焦りは禁物です。また万全な状態に戻してマウンドに立ち、躍動している姿を見たいですね。

 

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高橋純一(たかはし・じゅんいち)  1976年8月18日、神奈川県横浜市生まれの42歳。MLBサンディエゴパドレスで通訳兼コンディショニング補佐を務めた後、千葉ロッテマリーンズ、ヤクルトスワローズ、DeNAベイスターズファーム等でチーフトレーナーとして活動。17年より独立。幅広いストレングス&コンディショニング領域をアレンジ、シンプル化させ、「俺、最高。」「やってみるをかなえる。」をキーワードに老若男女問わず、自分の肉体の可能性を高め、向上していくサポートを行う。コーポレートコンディショニングという企業のトレーニング意識を変えるコーチングも担う。 J.T. STRENGTH & CONDITIONING コーポレートサイト(http://www.jt-sc.com)