J.T.連載第25回 大阪桐蔭に「野球バカ」はいない 異次元の強さの秘密は「人間力」

 

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 「J.T. STRENGTH & CONDITIONING」の代表取締役社長として活動しているJ.T.(高橋純一)と申します。今回は高校野球の「人間力」についてお話させて頂きます。

 

 第100回全国高校野球選手権記念大会は北大阪代表・大阪桐蔭が史上初となる2度目の春夏連覇の快挙を達成しました。大変な偉業ですが、大阪桐蔭の強さはただ野球がうまいという理由だけではないと思います。中川卓也主将、根尾昂内野手、藤原恭大外野手ら主力の選手たちは発言もしっかりしていて常に相手に敬意を払います。レギュラーの彼らだけでありません。ベンチ入りしている選手の姿勢にも感銘を受けました。沖学園戦では中前打を打って足が痙攣した選手に俵藤選手が氷、青木選手が経口補水液を持って一塁ベンチから真っ先に救護に向かいました。個別で動いたという話を聞きましたが、プロトレーナー顔負けの行動はなかなかできることではありません。各選手が組織名の中で自分の「役割」、「仕事」のすみ分けができている証拠ではないかと思います。選手同士が個々の能力を高めあうと同時に、人間としても成長する良いスパイラルが生じている。高校野球という枠を超えた大阪桐蔭の強さは、社会に今すぐ出しても通用する「人間力」なのではないでしょうか。

 

 大阪桐蔭の選手たちは中学時代からシニアやボーイズリーグで有名な精鋭たちです。全国各地から集まったエリート集団がおごり高ぶらず、謙虚で地に足が着いているのは西谷監督や指導者の教育、先輩から引き継がれている姿勢に影響を受けているという印象を受けます。実はこの「野球バカ」にならないことが簡単なようで非常に難しいのです。甲子園で活躍すれば、メディアで大きく取り上げられて浮ついた気持になりがちです。指導者もその慢心を注意せず、選手も教科書を開かずに授業をまともに受けなくなることが珍しくありません。「野球さえやれば世間が評価してくれる」という考えは非常に危険です。

 

 私はロッテ、ヤクルト、DeNAでコンディショニングをサポートする仕事をしてきましたが、高卒でプロに入団して結果が出せずに退団した選手を何人も見てきました。甲子園で活躍したという自信が過信になり、契約金で大金を手にして野球に対して本気で取り組まなくなり周囲の助言にも耳を貸さなくなってしまうのです。引退後も「甲子園で活躍した」というプライドを捨てきれずに苦しんでいる人間は少なくありません。高校野球はメディアで大きく取り上げられますが、盛り上がりは一過性であることを忘れてはいけません。野球をできる時間は限られています。指導者は高校生の3年間だけでなく、その先を見据えて指導していくことが、本来の野球というスポーツの意味なのだと信じています。

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高橋純一(たかはし・じゅんいち)  1976年8月18日、神奈川県横浜市生まれの42歳。MLBサンディエゴパドレスで通訳兼コンディショニング補佐を務めた後、千葉ロッテマリーンズ、ヤクルトスワローズ、DeNAベイスターズファーム等でチーフトレーナーとして活動。17年より独立。幅広いストレングス&コンディショニング領域をアレンジ、シンプル化させ、「俺、最高。」「やってみるをかなえる。」をキーワードに老若男女問わず、自分の肉体の可能性を高め、向上していくサポートを行う。コーポレートコンディショニングという企業のトレーニング意識を変えるコーチングも担う。 J.T. STRENGTH & CONDITIONING コーポレートサイト(http://www.jt-sc.com)